【世界遺産/萩城下町散歩】


『古地図で散策できる』と言われるほど、江戸時代当時の町割がそのまま残る町・萩。

「御成道」(北門屋敷表門前)

中でも北門屋敷のある萩城三の丸は、1976年に全国で最初の重要伝統的建造物群保存地区のひとつとして選定されて以降、厳しい規制のもとに保存されてきた貴重な町並みです。

 

北門屋敷の門を一歩出ると、そこはタイムスリップしたような武家屋敷の町並み。
古地図を片手に、萩城下町散策に出かけてみてはいかがですか?

 

 


■世界遺産[萩城下町]
2015年、世界遺産に登録された【明治日本の産業革命遺産】の構成要素『萩城下町』は「城跡」「旧上級武家地」「旧町人地」の3区画からなっており、北門屋敷のある「旧上級武家地」(萩城三の丸)には毛利一門や家老など萩藩重臣たちの屋敷の一部や土塀などが数多く残っています。そのため、古地図で散策ができると言われています。

 

「萩城跡」(徒歩5分)

■萩城三の丸とは 
萩城は「本丸」「二の丸」「三の丸」から形成されています。天守閣などがあった本丸は現在は「萩城跡」として入場することができます。本丸の外の郭までが物見矢倉などがあった二の丸、そこから外堀までの武家屋敷地区が三の丸です。外堀まですべてが萩城の“ご城内”であり、現在も地名を「堀内(ほりうち)」と言います。

 


家老・福原家表門(徒歩1分)

三の丸は、藩内最上級である毛利一門をはじめ永代家老や寄組など重臣の住居地だった地域で、地図上の城下の侍屋敷と比べてもその屋敷地の広さが際だっています。中でも藩主の通った御成道・本町(おなりみち・ほんちょう)沿いは1万石前後の上級武士の屋敷が建ち並び、当時の道幅は現在の約2倍もありました。

 

 

北門屋敷はその本町に面した毛利一門・吉敷毛利家(よしきもうりけ・古地図では毛利出雲)の屋敷跡に位置しており、表門の基礎部分には江戸時代の貴重な石垣を見ることができます。また西隣の家老・福原家にも石垣や表門が、東隣の益田家には堀内で最も長い土塀が現存しています。


毛利輝元廟所・天樹院(徒歩2分)

毛利輝元と天樹院
北門屋敷の創業当時の門は屋敷の北側にあり、この旧門の斜向かいに萩開祖・毛利輝元(てるもと)の廟所「天樹院(てんじゅいん)」があります。
輝元(1553-1625)は、三兄弟を三本の矢に例えて協力を諭した“三矢の訓え”で有名な毛利元就(もとなり)の孫にあたり、元就の死後19歳で家督を継ぎ中国地方8カ国120万石を治めました。しかし関ヶ原の戦いで徳川に敗れたため所領を防長2カ国(現在の山口県)36万石に減ぜられ、慶長9年(1604)萩に開府します。

萩藩初代は息子・秀就(ひでなり)に譲りましたが、秀就が幼少であったため輝元が初期の萩藩政に取り組みました。元和9年(1623)ようやく四本松邸に隠居、寛永2年(1625)に73歳で亡くなりました。のちにこの四本松邸を菩提所とし、輝元の法号から「天樹院」と名付けられました。
現在は輝元夫妻と、輝元に殉死した家臣の墓が静かに佇んでいます。


堀内鍵曲(徒歩5分)

散策時には迷路にご注意~鍵曲(かいまがり)
地図で見ると城下町は道が整然としていて分かりやすそうですが、実は歩くと迷いやすい路。それもそのはず、同じような白壁の通りの所々に丁字路などを配し、わざと迷わせるように造られているのです。中でも「鍵曲(かいまがり)」は見通しがきかないクランク状の路を高い壁で囲い、一見行き止まりに見えるようになっています。別名“追廻し筋”とも呼ばれるこの通りは、万一敵が進入した際に追い込んで城を守るための町の造りなのです。


白壁と夏みかん(堀内随所)

土塀と夏みかん~萩士族の苦難の歴史
堀内界隈でよく見られる土塀と夏みかん。萩を象徴するこの風景には、明治維新を生き抜いた士族たちの歴史があります。
明治9年(1876)、新政府の地方官を辞して帰郷した小幡高政(おばたたかまさ)が見たものは、廃藩置県によって職を失い路頭に迷う旧武士(=士族)の姿。何とかこれを救済しようと考えついたのが夏みかんの栽培でした。初めは周囲も疑いや嘲りの目で見ていましたが、高政の熱心な活動により士族達も次第に屋敷の庭先や跡地で夏みかんを育てるようになったといいます。農業も商売も経験がなかった彼らでしたが、揶揄されながらも新しい生活の糧を得るため努力を重ねた結果、夏みかんは植栽後10年余で「長州本場夏蜜柑」として全国に出荷されるほどの重要物産に成長しました。明治13年には愛媛県・和歌山県へ最初の苗を出荷、同17年には静岡県へ移出され、現在の柑橘栽培の先駆けに。萩の夏蜜柑の収入は明治中期からは米作とほぼ同額、戦後から昭和50年までは米作を上回っていたといいます。

現在は果物としての需要は少なくなりましたが、武家屋敷の町並みに大きな黄金の実で彩りを添え、初夏には可憐な花の香りで町を包んでくれる、萩の風景には欠かせない樹木です。


萩城城下町/江戸屋横町(徒歩15分)

世界遺産[旧町人地]
外堀を出ると、そこは武士も商人も住む城下町。特に世界遺産[萩城下町・旧町人地]は、たった300メートル四方の町の中に、有名な幕末志士や後の総理大臣ゆかりの場所などが数多く残る見応えある場所です。また、御用商人・菊屋家のなまこ壁をはじめ、豪商や医者、武家屋敷の連なる町並みは江戸時代を彷彿とさせ、城下町らしい風情を楽しむことができます